こちらはかなり興味深い、ジャイナ教、とくにディガンバラ派の「Siddha(シッダ/解脱した魂)」を表す古い金属製の図像です。
ジャイナ美術では、解脱した魂は肉体を持たないため、人間の輪郭だけを金属板から切り抜き、その「空白」によってシッダを表現するという非常に独特な表現があります。ディガンバラ派の寺院でこうした金属製のシッダ像が見られることも確認できます。
ジャイナ教では、すべての生き物にはジーヴァ(jva=魂)があり、魂はカルマに縛られて、何度も生と死を繰り返す「サンサーラ」の中にあります。
修行によってカルマを完全に取り除くと、魂は肉体から解放され、モークシャ(moka=解脱)に到達します。
その完全に解脱した魂を Siddha(シッダ) と呼びます。
ここが、このオブジェの非常に面白いところです。
シッダには肉体がありません。
だからこそ、普通の神像のように「人物そのもの」を彫刻することができません。そこで、
人間の形を「空白」として残す
という逆説的な表現が生まれました。
つまり、この作品の中央の人型の抜けた部分は「何もない」のではなく、肉体を超越した、純粋な魂そのものを表していると考えることができます。ジャイナ美術研究でも、このタイプを「解脱した魂=Siddha」を表す金属製の図像として説明しています。
薄い金属板を加工して人物の輪郭を抜き、周囲を装飾的なフレーム状に仕立てています。表面にはハンマーによる細かな打ち出し・槌目のような痕跡が残り、黒く古色を帯びています。
ジャイナ教 アンティーク シッダ像
SKU: god287
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